１年を振り返り、新たな年へと思いを馳せる時節となりました。元旦の大雪に始まり、豪雨や台風による河川の氾濫、火山の噴火、猛暑の夏…と、今年も異常気象や自然災害の目立つ１年だったように思います。海外での大気汚染や干ばつ、テロ事件なども激化し、国際的な問題を身近に感じた方も多かったのではないでしょうか。

「八百万(ﾔｵﾖﾛｽﾞ)の神」というように、神道では自然の万物に神さまが宿り、私たちをお守りくださるものと考えます。そのため昔の人々は、作物の豊作は神さまからのお恵みであると考え、雷や台風などが災いを起こしたときには神さまがお怒りになっていると考えて、行動の規範にしてきました。

こうした神道の立場から鑑みると、自然がもたらす災害は、私たち人間の行きすぎた行いを戒めるために起こるとも考えられます。自分たちが生きていく場所を大切にしよう、自然を大切にしようという気持ちを皆で共有しなければ、こうした問題は今後も拡大の一途を辿るでしょう。海外での出来事も他人事ではありません。これからはより世界的な視野を持って、問題に取り組んでいかなければいけないと思います。

では、こうした時代のなかで神社にできることは何だろう。そう考えながら、今年も当社ではいくつかの新たな試みを実践しました。まず数年前から取り組んでいる境内の整備を進め、お詣りにいらっしゃる方々の動線を意識しながら植木等を整えました。新設した社務所の周りには枝垂れ桜やいろはもみじなどを新たに植え、春、夏、秋、冬とそれぞれの季節ごとに境内の雰囲気が変わるようにしています。神社へいらした方々に、風の薫りや緑の清々しさといった目に見えない自然の恵みを感じていただき、豊かな気持ちでお詣りしていただけるようにとの思いからです。神さまのご神徳をいただくとともに、鳥居をくぐると心が元気になり、夢を叶えるための希望が湧いてくる…私は当神社を、そんな風に感じていただける場所にしていきたいと考えています。

春頃からは、新しい御守の奉製にも取り組みました。いままでにない斬新なデザインで、神職がひとつずつ焼き印を押して心を込めた手作りの御守です。ご希望の方は神職にお声をおかけください。

また夏には、文化庁が主催する「伝統文化親子教室事業」の補助を受け、「神楽の太鼓教室」「神楽の巫女舞教室」を開催しました。伝統文化親子教室事業とは、伝統文化や生活文化の継承と発展を目的に、次代を担う子供たちとその保護者に対し伝統文化の体験と習得の機会を提供する取り組みを支援する事業で、こうした活動を通し子供たちの豊かな人間性を養うことに寄与したいとするものです。

当神社が開催した巫女舞教室では、巫女舞のお稽古だけでなく、立ち方や座り方、正座などの作法についても神職が指導を行い、これが保護者の方々に大変好評だったようです。夏の教室が終わったのちもお稽古を続けたいという声をいただき、今後も月に一度の割合で教室を開いていくことになりました。

子供たちの夏休みを利用した取り組みとしては、星川小学校放課後キッズクラブの子供たちに対しても神楽の講習会を行いました。星川小学校放課後キッズクラブというのは、放課後を過ごす子供たちに安全で快適な居場所を提供することを目的に小学校施設を活用しようとする児童クラブです。

このお稽古を担当したのは明神神楽会で、全７回の講習会を通じて笛や太鼓を一緒に練習し、秋の例大祭でその成果をご神前に発表しました。

私は、これらの試みを通して子供たちと神社との間につながりが生まれたことをとても有意義に感じています。子供たちもまた、何かを一生懸命やることから生まれる満足感や達成感を味わう経験ができたのではないでしょうか。こうした子供の頃の「何かに一生懸命取り組み、その成果を神さまにご覧いただく」という体験から生まれる清々しい気持ちは、目に見えないところで生きる原動力となり、大人になってからも心を支える大きな力となります。ですから私は、今後も神社と子供たちとのつながりを大切に育て、神社としてできることをひとつひとつ重ねていきたいと思っています。

何かを新たに始めたり、長く踏襲してきた物事を刷新するというのは勇気のいることです。けれど、考えているだけでは始まりません。これからも当神社では、神さまのため、お詣りされるみなさんのためによりよいご奉仕ができるよう、新たな一歩を踏み出していきたいと考えています。

人と人とを結びつける温かなつながりを、大きく育てていくために。

みなさんが希望に満ちた新年をお迎えできますよう、心よりお祈り申し上げます。