星川杉山神社

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宮司さんのおはなし 第31回

11月に入り、七五三詣のご家族で境内が賑わう時季となりました。以前よりお話ししている通り、当社ではご祈祷をお受けになるお子さんと付き添いの親御さんとを拝殿の前列と後列に分けてお祀りを行っています。(詳細は第13回のおはなしを参照)

式のあとにはお子さんのお名前をお呼びしてお返事していただき、普段のご挨拶について尋ねたりしているのですが、今年は神職たちがさらに新たな試みを始めました。

「みなさんのお父さんお母さんお祖父さんお祖母さんは、みなさんを病気や怪我をしないように、すくすくと成長するようにと一生懸命育ててくださいました。みなさん、宮司さんと一緒にありがとうとご挨拶しましょう」

そうお話しして、お子さんから親御さんへお礼の言葉を言っていただきます。互いに目を見てこうした言葉を贈る機会というのはなかなかないようで、なかには涙ぐまれる親御さんもいらっしゃいました。私もまた日頃の感謝を、こんな風に「ありがとう」ときちんと言葉に出して伝えることの大切さを改めて感じました。

そこで今回は、こうした家族の絆を強めることにもつながる「家庭祭祀(カテイサイシ)」についてお話ししたいと思います。

家庭祭祀とは、お家のなかに神棚を設け、朝夕に伊勢神宮の大麻と氏神さまの御札、崇敬する神社の御札をお祀りして神さまにご挨拶する、家庭でのお参りを指します。従来、日本の社会は家族制度を中心に発展してきました。生活の基盤となるのは家庭です。そのため人々は日本人の祖神さまと土地をお守りくださる氏神さまを尊び、神道の家系の方は御霊舎に、仏教の家系の方は仏壇に先祖をお祀りして敬うことを重んじてきたのです。日本人の信仰生活はこのようにして脈々と受け継がれてきました。

毎朝起きたら顔を洗って歯を磨き、手をすすいで、心身を清らかにしてから神棚にお供えをしてお参りします。それから家族で朝食をいただき、仕事や勉強など、それぞれの1日を始めます。帰宅後は再び神棚に向かい、今日1日を無事に終えたことを神さまにご報告します。そしてまた家族で食卓を囲み、団らんの時間を楽しみます。

昔はどこの家庭でも、そんな光景を当たり前に見ることができました。皆でひとつのことをすることによって心もひとつになり、家族揃っての方針、指針といったものが自然に生まれたように思います。朝夕のお参りは生活にけじめをつけるよい機会にもなり、常に神さまの存在を感じながら暮らすことは物事の良し悪しを判断する力や他人への思いやりを育てることにもつながりました。

いまは、こうした生活を送るのが難しい時代なのかもしれません。子供たちは塾や習い事で、大人は夜遅くまでの付き合いなどで忙しく、帰宅や食事の時刻もばらばら、親子や夫婦で会話する機会もなかなか持てないのかもしれません。けれど、だからといってテレビやゲームに向かってばかりの毎日でよいのでしょうか。夫婦共稼ぎだからといって、子供の教育に対する責任を学校ばかりに負わせる考え方でよいのでしょうか。

日本人が積み上げてきた大事なものを、家庭祭祀を通してもう一度みなさんに取り戻していただきたいと私は思います。昔は神棚のほかに火の神さまである荒神さまを台所にお祀りしたり、お庭に稲荷社を設けたりしているお家も多く見られましたが、マンション住まいの方が多い現代ではお部屋に神棚を設けることさえままならないかもしれません。けれど、形式にこだわる必要はないのです。明るく清浄な高所に神棚をお祀りし、国をお守りくださる天照大御神さまを中心に、土地を司る氏神さま、この1年をお守りくださる年神さま、そして崇敬する神社の神さまの御札をお祀りして、お米、お酒、お塩、お水をお供えし、朝夕にお参りします。季節の初物や珍しい物などもまず神さまにお供えしましょう。朝お供えしたお米などは夕方には下げ、神さまのお下がりとして皆でいただきます。そうすることが神さまのお徳をいただき、ご加護を受けることにつながります。

これまで家庭祭祀を行ってこなかった方々にとって、こうしたことを新たに習慣づけるのはなかなか大変なことでしょう。毎日できなければ、できるときだけでも構いません。要は「自分はいま、神さまのご加護のもとに先祖の意思を引き継いで生きている」という意識を持って暮らすことが重要なのです。

 

家庭祭祀は、1日1日を大切に生きる姿勢を作ります。親がそうした意識を持てば、子供もその姿を真似るようになるでしょう。そして家族が同じ気持ちでお家を大切に思うようになれば、そこには輪が生まれます。「円満」とはそういうことであり、それこそが家庭祭祀の原点なのです。

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